こんにちは、ピースボートセンターよこはまのほたる(德永)です。
関東では台風が過ぎ、暑い日々が続いていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
先週からオリンピックが始まり、続々とメダルを獲得しているニュースが日々報道されていますね。
私は中学の時ソフトボール部に所属していたので、日本がソフトボール競技で金メダルを獲得したと知った時はすごく嬉しかったです。
テレビを持っていないので、残念ながらその瞬間を目にすることはできなかったのですが、地元にいる祖母から「ソフトボール金メダル取った😃」と連絡が来たので臨場感だけでは体感できました。
さて、今日は金曜日。毎週金曜日はピースボートセンターよこはまに携わるメンバーがおすすめの本や作品を紹介するブログ、『Rose à cinq roues』です。
今回紹介する本は…
さがしています ビナード アーサー(著) 、岡倉 禎志(写真)
この本はアーサーさんが大学卒業後に来日し、広島を訪れ被爆者の話を聞き、資料館をめぐっていく中でであった「ものたち」が発する声をまとめた作品です。
「さがしています」という本の題名には、持ち主をなくした「もの」や当時自分の役割があったがその役割を果たせなくなった「もの」が、それぞれ原爆投下により「失った何か」を探しているという意味が込められているのだなと感じます。
本との出会い
今からちょうど2年前に出会った本です。
100回クルーズに乗船した際、おりづるプロジェクトのユースとして乗船していた方が登壇するイベントがあり、そのイベントで同じく登壇者としていたのが、この本の著者、アーサーさんでした。
私は100回クルーズ乗船時には、被爆証言会を生で聞き、下船後にはオンライン被爆証言会などに関わらせていただく中で、被爆者の声を聞く機会が人より多くある生活を送っています。
出会う前と変わった「目線」
被爆者の声を届ける活動をしていても、なかなか被爆したのは「人」だけでなく「もの」も同じということに意識を向けることができていなかったなとこの本と出会って気づきました。
当時広島にいた誰かが使っていた、必要としていたものたち。
そのものたちが語る当時の世界を、違った目線で見つめる機会をくれます。
この本では14点のカタリベが、当時のことを教えてくれています。
そのカタリベたちが教えてくれるのは、確かにあった人々の「生活」そのものなのです。
この本を通して伝えたいこと
今まさに開催されているオリンピックは、時代とともにその意義を変えていますが、中でも近代オリンピックと呼ばれる現在のオリンピックの意義を知っていますか?
「スポーツを通して、文化や国籍の違いを乗り越え、平和な世界の確立、維持に貢献する」というもので、スポーツから世界平和を発信しているのです。
私は、世界一周をしていく中で様々な国や地域のことについて知っていく中で、自国に対する「無知」な自分に、無責任さを感じました。
だからこそ、自分たちの祖先がしてきた貢献だけでなく、繰り返した悲劇や加害者側の顔を知る必要があると考えています。
とはいっても歴史を紐解いて学んでいくのには膨大な時間や気力が必要になります。
だからこそ、31ページという本の中では短い作品である、この本と向き合うことから始めてみてほしいです。
そして、この本を通して伝えたいことはもう一つあります。
「ひばくしゃ」と聞くと、日本の人を想像するかと思いますが、当時被爆したのは日本人と呼ばれる人だけではありません。原爆だけでなく核実験などで被ばくをしている人を含むと世界にたくさんいます。世界単位では「(グローバル)ヒバクシャ」ということが多いです。
日本国内にいるとどうしても原爆による「被爆者」の方の声を聞くことが多いですが、世界には原爆および、核兵器に対する発信をしている人たちがいます。
この本も、アメリカで生まれ育ったアーサーさんが「ものたち」を通して感じた生活を、当時の様子を代弁しています。
「さがしています」、この本は世界全体で考えていくべき課題に向き合えるきっかけになるかもしれません。
ピースボートセンターよこはまに置いているので、気になる人はほたるまで声をかけてくれると嬉しいです。ぜひ、手に取って10分でもいいので”カタリベ”たちの声に向き合ってみてください。
文 德永涼子(ほたる)